たとえばセカイが沈むとき


 ホログラムの投影時間が終わり、表示されていたものが消えると、まるで白昼夢から醒めたかのようだった。

 あまりにタイミングが合い過ぎている気がして。チサトの命日に事故現場で、都合良く現れた『過去へ戻る決心』を突きつける男。チサトの導き?──まさか。

 手にしたカードが『これは夢じゃない』と主張する。男の言葉が耳に残ってもいた。

 無視を決め込むには気持ちが中途半端で。否、男が立ち去る前に、もう心の準備は出来ていた気がする。

 嘘かもしれない。担がれただけかもしれない。男は"悪魔"と名乗った。全くの善意から声を掛けて来たわけでは無いだろう。そのくらいは察しがつく。──しかし。

 目的はお互いにシンプルなほうが良い、というのも確かだ。

 僕はカードを無造作にポケットへ入れ、手で押さえながら歩きだした。

 行って確かめてみよう。カタリだったなら、途中で帰ってくればいいだけの話だ。


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