たとえばセカイが沈むとき
開けた扉の向こうには、ぽつんと男がひとり立っていた。
男の後ろには、細長い筒状の金属が横たわっている。筒の部分はゆうに大人一人が入れるくらいあった。結構な体格の持ち主でも大丈夫そうだ。両端は窄まっていて、特に片側が針のように尖っている。
部屋の中にあったのは、それだけだった。過去へ行く為に何か関係するものだろうか。予想するだけで、鼓動が少し速まった。
「早かったですね」
僕が来るのを疑いもしなかったように、男は躊躇いもなくそう言った。
「詳しい説明は必要ですか?」
男は僕が"過去へ戻る"のを、決定事項みたいに言う。このまま彼のペースであるのを、よしとするわけにはいかない。僕の意思で過去へ──チサトの元へ行くのだと、ハッキリさせなければ。
男にとってみれば、そんなのはどうでもいい事だろう。僕にはそれが大切だというだけだ。