もう会えない君。


こんな些細な事で幸せに思えるのにその時間は儚く消える。


時間は刻々と時を刻んでゆく…1分、また1分と音を立てて刻む。


止まる事を知らない時間は徐々に約束の時間に移り変わって…――――私は鞄を持って家を出た。


憂鬱な気持ちのまま、心の中で最悪だと呟いて。
大きな溜息がエレベーター内にこだましたのは誰も乗っていないからだったのかもしれない。


一歩一歩、待ち合わせ場所へと近付くにつれて足に重荷が掛かった。
行きたくないと拒み始めている証拠なのだろうけど私の体は拒否する事を知らない。
だからこうして止まらずに歩き続けているんだと思う。
でも、それは誰が悪いとか悪くないとかの問題ではなくて、ただ単に断る事が出来ればいいだけの事。


私にはその断る事が出来なくて…。
結局、こうして相手の言う通りに動いてしまう。
動かなきゃいけないって思ってしまうからなのかもしれないけど。


待ち合わせ場所に着いたのはいいけれど、まだ由香里さんの姿はなかった。


時刻は10時を少し過ぎたくらい。
…なのに由香里さんは現れない。


私が来るの遅れちゃったのかな?
そう考えてはみたものの正確に言えば時間なんて決まってない。
曖昧な時間だったから正確な時間を私は知らない。


「はあ…」
溜息が零れる。
いつ降るのかも分からない雨。
雲行きは次第に怪しくなり、小雨がポツリポツリと降り注いでくる。
それでも動かなかったのは約束した場所がここだからと体が離れようとしないからで私は小雨に打たれた所為で若干、濡れてしまった。
< 174 / 321 >

この作品をシェア

pagetop