もう会えない君。
「………」
時間が経った事に気付いたのは、
「おい、悠!起きろ!」
私の次に起きた隼だった。
どうやら私達は話疲れて途中で眠ってしまっていたらしい。
だから目が覚めた頃には夕日がほぼ沈みかかっている時間帯でオレンジ色に近い空の色ではなく、紺色に近い空に移り変わろうとしていた。
なのに…。
「悠っ!起きてっ!」
ぐっすりと眠る悠はまだ夢の中。
余程、気持ちが良いのか、小さく微笑んでいるようにも見える…――――なんて事を言ってる場合じゃないんだけど。
「電車に乗り遅れちゃうよ!悠ってばぁ!」
体を揺すってみたけど悠は起きない。
名前を呼んでも起きない。
勉強した後に出る疲れが半端じゃないのは知ってる。
だけど、今はそれどころではない。
電車に乗り遅れてしまえば帰る手段が無くなるという事。
「はあ…凛、どうする?」
「うーん…、どうしたらいいのかな?」
「…終電で帰らせるしかなさそうだな」
「悠の両親に連絡は?」
「あー、こいつ一人暮らしだから大丈夫」
「一人暮らしなの!?」
「うん。聞いてなかったのか?」
「聞いてない!」
「ありゃ…まあ、そうゆう事だから寝かせとけ」
「分かった」
私は先に部屋に戻る事にした。
寝息を立てて気持ち良さそうに眠る悠の横を通り過ぎて隼に手を振り、静かに部屋へと戻った。