もう会えない君。


多分だけど、悠は起きないと思う。
余裕で終電に乗り遅れると思うから隼は悠を家に泊めると思う。


だから敢えて帰る事を選択した私。
目を覚ました後の悠の反応が面白そうだけど見れないのが残念だ。
私が居ないから悠は喚くというか、時間の事よりも私が居ない事を驚くだろう。


今日は楽しかった、と思いながら眺める夜空はいつもより輝きを増していた。


まだ寝足りないのか、頭痛がしたから早めにお風呂に入って眠りに就いた…――――まではよかったんだけど後程、起こされる羽目になるとは思いもしなかった。


私が夢の世界に入り浸っている時、何やら五月蝿い音がこだましている。
別世界…そう、夢ではなくて現実世界で。
五月蝿い騒音の所為で私は夢の世界から現実世界へと引き戻された。


「あー!五月蝿い!」
跳ね上がって起きてみたものの五月蝿いのは周りではなく、自分の携帯の着信音だった。


電話だと思い、急いで携帯を手に取ると知らない番号が表示されていた。
…悪戯電話?
勝手にそう判断していいのだろうか、それとも間違い電話?


出ようか、出まいかで悩んでいると音が鳴り止んだ。


画面は移り変わり、【着信あり:4件】の文字が表示された。


どれも電話番号は同じなんだけど知らない番号。
間違い電話にしてはしつこ過ぎる。
四回も電話を掛ける意味が分からないと溜息を零すと再び携帯が鳴った。


しかもまた同じ番号。
知らない、未登録の番号。


夢の世界から現実世界へと引き戻された私は相手が誰か、よりも苛立ちの方が圧倒的に強かったらしく、

「はい?」
怒りを込めて通話ボタンを押した。


『まじでやべえ!』
突如聞こえた電話越しの声に聞き覚えがあるような、ないような…。


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