もう会えない君。
何がやばいのか分からない。
だけど、この声の主も思い出せそうで思い出せない。
相手の方は驚いているのか、黙り込む始末。
私も黙り込んでみると妙な沈黙が流れたから電話を切ろうかと思い、耳元から携帯を話した時、相手側が口を開いた。
『……凛か!?』
「………」
この声で、言葉でやっと繋がった謎の糸。
通りで聞き覚えのある声だと思ったわけだ。
『まじで凛だよなっ!?』
「…どうしたの、悠」
電話を掛けて来てたのは悠で、私が居なかったから驚いたらしい。
『起きたら隼しか居ねーじゃん?』
「うん」
『隼に聞いたら帰ったって言うじゃん?』
「うん」
『こんな夜道を出歩く女子高生に何かあったらって思ったわけだ!』
「…うん?」
『世の中は危険で溢れてるんだぞ!』
「…あ、はい」
『それなのに一人で帰るとは何事だ!』
「…すみません?」
『危ないだろ!隼も呼び止めろよ!』
「……あのさ、悠?」
『確かに俺も高校生だけど凛は女の子だろ!?』
「…そうだけどさ、」
『危ねえだろ!?まじでビビるだろ!俺が起きるの遅かったのが悪いけど!』
「…だからさ、悠?」
『てか隼!お前は彼氏としてなぜ彼女を守らないんだ!』
「………」
『おい、はや…――――』
「私、隣に住んでるんだけど」
悠の暴走は私の一言で終わりを告げた。
私が口にした一文で終わりを告げたと同時に電話越しで隼の「人の話を聞かなかった悠が悪い」って言葉が聞こえた。