もう会えない君。


当たり前のように手を繋いで足を進める私達が向かったのはマンションからは少し遠い所にある河川敷付近。


あそこで今日の祭りがある。
…よくよく考えてみれば“祭り”というよりは“花火大会”なのかもしれない。
祭りと言えば祭りだけど、どちらかと言えば花火大会の方がしっくりくる。


私達が着く頃には人盛りが出来ていて屋台は既に混雑していて人が一人通るのがやっとという感じでこれじゃ逸れたら迷子になっちゃうんじゃないかって思った。


だけど隼はそんな私の手を強く握ってくれた。
逸れないように、迷子にならないように、強く握ってくれた。


「凛、かき氷あるけど食べる?」

「うん!」

「何味がいい?定番のイチゴ味?」

「んー…」

「マンゴーもあるみたいだぞ?」

「なんですと!?」

「期間限定だって、どうする?」

「マンゴー味で!」

「りょーかい、今買ってくるから橋の所で待ってて」

「分かった」

繋いでいた手を…初めて放した瞬間。
私と隼はまったく逆の方向に歩き出した。
私は橋の方へ、隼は屋台の方へ。


人混みを掻き分けて橋の方へと足を進める。
橋には腰を掛けるベンチがある。
そこで眺める花火はどれ程、美しいのだろう?
きっと河川敷で眺めるよりも綺麗なんだろうな。

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