もう会えない君。
この橋は人気じゃない。
腰掛けるベンチがあるのに人気じゃない。
だから人が来ないし、混雑する事もない。
取り合いになる事もなければ悠長に眺める事も出来る。
多分…
この橋は、この橋にあるベンチは、ある意味で特等席だろう。
見易い角度で椅子があって橋があって景色は最高。
だけれど不人気な理由が分からない。
河川敷で見ると迫力は確かにあるけど、この橋から見上げる花火だって絶景に違いない。
ベンチに腰を下ろして、まだ打ち上げられない空を眺めてた。
幾つもの星が輝いてる。
夜空に相応しいくらいの輝きを放ってる。
昼間は蝉の鳴き声が五月蝿いのに、今はやけに静かに思える。
静かに思えるのではなくて周りが五月蝿いだけなのかもしれないけど。
「はい、マンゴー味!」
しばらくして隼が人混みを抜け出して私の隣に座った。
そして持ってるかき氷を私に差し出したから私は隼からかき氷を受け取った。
「ありがとう」
隼はいつも気遣いが上手い。
私がお礼を言うたびに見せる笑顔が可愛い。
「美味しい!」
「まじ!?よかったな!」
「隼は何味~?」
「定番のイチゴ味!」
「やっぱり夏はかき氷に限るね」
「だな、夏限定だしな」
ひんやりとした冷たさが丁度良い。
二人でかき氷を食べながら花火が打ち上げられる19時までベンチに座ってる事にした。