もう会えない君。


本当は頭の中で嫌な予感がしていた。


だけど気を紛らわせる為に私はダッシュで駅前に向かった。
早く離れたくて、ファミレスという場所を頭の中から消したくて、無我夢中で走った。


今居る場所から駅前まで走ると必ずと言っても過言ではない程の汗を掻く。
息切れも半端じゃないだろう。
でも頭の中を空っぽにする為だと思えば、どうって事なかった。


本当は気になる。
ファミレスに行って本当に居るのか確認したいくらい。
だけど行かないのは隼を疑ってるみたいで嫌だったから。


ファミレスに行けば、隼を信じていないという事になる。
幼馴染の由香里さんと居るであろう隼を信じ切っていないという事になる。
それだけは回避したい。だって私は隼を信じているから。


嫌な予感がしても。
喩え、その予感が的中しても。


隼を信じているという事に変わりはないのだから…。


不安を掻き消したくて、嫌な予感を掻き消したくて、走った。
頭の中を真っ白にしたくて。
今、考えてる事を全て白紙にしたくて。


風が当たるたびに闇雲は減っていった。
“不安”という名の闇雲は風と共に儚く消えた。


駅前に到着する頃には息切れが酷くてクレープよりも酸素が欲しいと思ったくらいだった。
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