もう会えない君。


「り、凛さん!早過ぎですよっ!」

「…ごめん…っ…日が暮れると思って!」
息が切れる中での会話は簡単なものではなかった。
整えつつも言葉を交わすのは意外に大変だった。


数十分くらい、駅前のベンチで呼吸を整えると言葉を交わすのも普段通りになった。


「クレープ屋、行ってくる!」

「分かった」
呼吸の乱れも整ったという事で早速、悠は駅前のクレープ屋さんへと向かった。
女子高生の間で人気のクレープ屋さんは今日も高校生のお客さんが結構居た。


商売繁盛…。
その言葉が相応しいだろう。


風が吹いて落ち葉が舞う。
出来れば夏に吹いてほしいくらいの涼しい風。
この風もいつかは寒さに変わり、涼しいという言葉より冷風という言葉の方が似合うようになるのだろう。


刻まれる時間にあと、どれくらい思い出を残す事が出来るのだろう?


こうして三人で遊べるのも勉強出来るのも学校で会えるのも…いつかはなくなってしまう。


始まりがあるように全てに終わりも存在する。
だから私達に残された時間が少ないのなら、大切に過ごしたいと思った。


悠と言葉を交わす事も、いつか当たり前じゃなくなるかもしれない。
その逆に隼と言葉を交わす事も、いつか当たり前じゃなくなるかもしれない。


当たり前がなくなった時、人は“大切なモノ”に気付くのだろう。
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