もう会えない君。


そんな日が続く中で理由を知ったのは数週間後。


悠と駅前でいつも通りに別れて、マンションに向かう途中だった。
もうすぐでマンションの出入口…という所で呼び止められた。


「…凛ちゃん?」


この声は…。
懐かしく感じる、この声は…。


「皐くん…」


それは紛れもなく、隣に隼と一緒に住んでいる皐だった。


「あ…あのさ!」

「何?」

「今から時間ある?」

「え?」

「聞きたい事があって」

「…聞きたい事?」

「えっと、あそこの喫茶店で話さない?」


皐が視線を駅前にある喫茶店に向けながら言った言葉に私は小さく頷いた。


本当に久しぶりに会った皐は前と変わってなかった。
声色も、言葉も、何一つ…――――変わってないように見えた。


だけど本当は変わってたかもしれない。
この空気からして“良い話”ではないという事くらい分かる。


皐の後ろ姿を見てるだけで醸し出される暗い影が…良い話ではないという事を象徴しているようだ。
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