もう会えない君。


「んー…あっ!」
悠は思い出した、とでも言うように声を上げた。


そして綴られた言葉に私は悠の手を引いて走り出した。


…嘘。
なんで、神様はこんな事をするの?


間違いであってほしい。
出来る事なら、見間違いであってほしい。


だって…。


あの方向は…――――“病院に行く通り”なのだから。


今、あの病院には隼と皐が居る。
生気を失った人間は何をするかも、何を考えているのかも分からない。


どうしよう…。
隼が今、丁度、病院を出ていたら…。


急いで携帯を取り出した私はアドレス帳を開き、隼に電話を掛けた。


<プ…――プルルル…>


まだ?
何か、あったの?


ねえ隼…。
お願いだから電話に出て……。


まだ病院に居るって言って。


まだ外には出てないって、まだ帰らないって言って…。


隼…。
電話に出て。


<プルルル…――ッ>


出た!
< 286 / 321 >

この作品をシェア

pagetop