もう会えない君。


「あっ、もしもし隼!?」

『…――留守番電話サービスに接続します』


返ってきた言葉は隼の声じゃなかった。
電話に出たのは隼じゃなくて、携帯のシステム音声だった。


私は通話を切って、ポケットの中に携帯を仕舞い込んだ。


そして、さっきよりもスピードを上げて来た道を戻った。


この胸騒ぎは何…?
この嫌な予感は何…?


急いで戻った。
来た道を、急いで。


「お、おい、凛!どうしたんだよ!」
悠は動揺しまくる私に乱れた息も整える事なく、問い掛けてきた。


「………っ」
だけど、言葉が見つからなくて何も返せなかった。


正確に言えば、頭の中が真っ白だった。


分からない。
なんで来た道を戻っているのかも、なんで焦っているのかも。


説明出来ないけど、とにかく病院に戻らなきゃいけないって思った。


だから私は来た道を戻っているんだと思う。


由香里さんの正常とは言い切れない、あの姿を見たからなのかもしれないけど。
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