もう会えない君。
由香里さんは近道をしてるから、私達よりも早く着いてしまうかもしれない。
もしかしたら既に着いているのかも…。
隼の携帯は留守電に接続される事の繰り返し。
走りながら掛け直したけど、隼が出てくれる事はなくて。
そうこうしてるうちに私と悠は病院に辿り着いた。
まだ隼が居ますように、と祈りを込めながら皐が居る病室へと向かった。
勢いよく開けた扉の向こうに…――――隼の姿はなかった。
「あ、凛ちゃんと悠じゃん!忘れ物?」
皐は優しく微笑みながら問い掛けてきたけど答える暇なんてなかった私は皐の質問を無視し、逆に質問した。
「隼は…?」
生唾を飲み込んだのは私だけではなく、悠も同じで皐の口から出る言葉を待った。
「え?隼なら…」
不思議そうな表情を浮かべながら時計に視線を移す皐。
まだ帰ってないって言って…。
なんて心の中で祈るように繰り返した私の願いは儚く消えた。
――「数十分前に帰ったよ」
綴られた言葉は私を奈落へと突き落とした。