もう会えない君。


由香里さんは言った。
低い声で、冷たい声で…。


――“私の隼”と。
――“私のモノ”と。


狂ってる。
この人…狂ってる。


世界は自分が回してるとでも思っていそうだ。
欲しい物は全て手に入った、いらない物は捨ててきた、そんな人生を歩んできたのだろう。


なんで、この人はこんな風になっちゃったんだろう?
想い続ける事は素敵な事。
だけど…想いを伝える事はもっと素敵な事。
彼女はそれが出来なかったのかもしれない。


想いを伝えるという事を拒み続けてきたのかもしれない。
“幼馴染”という肩書を“彼女”に変える勇気が足りなかったのかもしれない。


由香里さんは私よりも隼を想ってた。
生まれた時から一緒の二人。
家も隣近所だったらしく、遊ぶ時も常に一緒。


だけど…。
ある日を境に変わったらしい。


中学の頃に出来た隼の彼女さんは独占欲が高かったのか、女の人との絡みを嫌った。
それが由香里さんの耳に渡り、由香里さんは隼が苦しめられていると判断した。


嫉妬が生んだ、誤解。


だから隼と付き合っていた彼女さんを脅した。
そして、いっその事、隼を自分だけのモノにしようと悠に罪を擦り付ける方向性で当時、隼と付き合っていた彼女を脅した。


一人占めしたかったんだと思う。
ずっと一緒だった隼を自分だけのモノにしたかったんだと思う。


でも…。
隼は“モノ”じゃない。
一人の人間なのに…どうして気付けないんだろう?
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