もう会えない君。
私の目の前で、隼のお母さんは泣き叫んでいた。
今にも倒れそうな隼のお母さんを抱き寄せる隼のお父さん…。
そんな二人を入口付近で立ち尽くす私は見ていた。
辛かった。苦しかった。
見ているだけで呼吸が乱れて頭が痛くなったのを今でも鮮明に覚えている。
病室での出来事が私の脳裏に蘇る。
泣き崩れる母親。
それを支える父親。
声を押し殺して涙する悠達の姿。
そして、その姿を廊下で見つめていた私。
あの時…
私が隼と出会わなければ、二人の運命は変わっていたのかもしれない。
あの日…
私が一緒に帰る事を選択していたら、こんなにもの残酷な試練を迎えずに済んだのかもしれない。
運命は残酷だ。
どんな道でも“運命”だ。
誰も神に逆らう事は出来ないの。
私も逆らう事が出来なかったように逆らう事が出来る人なんて居ない。
どこの道で私は間違えてしまったのだろう?
どこの選択肢で私は間違えてしまったのだろう?
答えが分からない。
答えが見つからない。
もう…目の前が真っ暗になりそう……。
分かってる。
辛いのは私だけじゃないって事くらい。
分かってる。
苦しいのは私だけじゃないって事くらい。
悲しみに暮れる時間も皆、平等だって事くらい分かってるよ。
だけど辛いの…耐えられないの…。
受け入れたくないと拒否してしまうの…。この“現状”を。
私に向けられる生徒や教員達の視線が痛かった。