【短編】放課後、キミと教室で。
「あら、末崎先生。まだ残ってらしたんですか?」
「あ、はい。明日の授業の準備で…。」
教卓の木の壁の向こうから聞こえるその声は、警備のおじさんの声だった。
教卓からドアはわずかな距離。
ドキドキしているこの鼓動が聞こえてしまいそうで、ただでさえ狭い教卓のしたであたしは更に小さくかがみこむ。
「もう少しで閉門の時間なので、お早めにね。」
「はい、すみません。急ぎます。」
そう、先生が返事するとドアが閉まる音がした。
警備のおじさんは行ってしまったのだろうか?
物音がしないのを合図に、かがみ込んでいたあたしはゆっくりと顔を上げた。
すると、「わぁっ!!!」
先生が教卓の下に隠れたあたしを覗き込んでいた。
「しっ!」
先生が人差し指を口に当てる。
「…ごめん。」
小声で謝ると、先生はなぜだかイタズラに笑いながらあたしを見る。
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