ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「ともかく二人とも、安全なところへ避難しましょう」

あの魔物たちが彼女に気を取られている間に、何とかここを脱出しなくてはならない。

私とエドは立ち上がり、逃げようとしたのだが。

「アレックス、どうしたの? 早く逃げないと…」

彼は座り込んだまま、全く動こうとしなかった。

俯いているのでその表情は見えなかったが、しかし何やらぶつぶつと呪文のように呟いている声が聞こえてきた。

「まさか俺が……このようなところで……あのような輩に……」

「ぐわぁぁぁっ!!
またコイツはぁぁぁ!!!」

「エ、エリスさん〜落ち着いてください〜!」

私はこの場で思わず頭を掻きむしりながら、身悶えしてしまった。

アレックスはまたこのような状況の中で、一人落ち込んでいるのだ。一人で落ち込むのは一向に構わないのだが、時と場所を考えてほしい。

ともかく彼が一旦こうなったら厄介である。周囲の言葉など、殆ど聞き入れなくなるのだ。

ここにディーンでもいれば上手く宥めてくれたかもしれないが、生憎今は別行動中だった。

「アレックスさんも〜、しっかりしてください〜!」

エドがアレックスを強く揺さぶって正気に戻そうと試みているのだが、効果はなさそうである。

その間にも瓦礫の破片や、先程のような流れ弾も時々落ちてきていた。

直ぐに正気の戻った私の防御術で今のところ防いではいるものの、私も逃げられるだけの体力や気力は温存しておかなければならない。

そのため、いつまでもこの状態ではいられなかった。

これは一番手っ取り早い方法で、アレックスを目覚めさせなければ。
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