はぐれ雲。
「もう一杯作りましょうか?」

「ううん、もういいの。ありがと」

リサは時計に目をやった。

「やっだ、もうこんな時間?ごめんね、レン。こんな時間まで飲ませてもらって」

「いいえ、他ならぬリサさんのためですから」

「うまいこと言っちゃって。それにしても…」

リサはため息をついた。

「亮二、最近ここにも顔見せてない?」

レンと呼ばれた男は残念そうに「来られてないですね」と答えた。

「電話しても出ないし、連絡とれないのよね」

そう言ってバッグから財布を取り出そうとしたとき、クローズドのプレートがかけてあるにもかかわらず、店の扉が開いた。

「亮二!」
思わずリサが立ち上がって駆け寄る。

「もぉ~なんで連絡くれないのよ。会いたかったんだから!お店にも来てくれないし…」

甘えた声でそう言うと、長身の亮二に飛びついた。

「すまなかった、こんな時間まで」

しかし亮二はリサにではなく、レンに謝る。

「いえ、とんでもありません。何か飲まれますか?」

「いや、すぐに出るからいい。本当に迷惑をかけた」

そう言って亮二は胸元から財布を取り出し、一万円札数枚をリサの座っていたカウンター席に置いた。

「とっておいてくれ」

そしてそのままリサを連れて店を出る。

彼女はただ亮二をいとおしそうに見たまま、レンに見向きもしなかった。


レンはしばらくグラスを静かに磨いていたが、突然大声で叫びながら、リサが飲んでいたグラスを払いのけた。

「…ざけんなよ!!」

グラスはカウンターから落ちて見事に粉々になり、青い光があたり一面に散りばめられる。

「…なめんなよ」

彼の荒々しい息遣いが聞こえる。

「バカにしやがって」

そういうと彼は亮二が置いていった一万円札を握りつぶした。


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