はぐれ雲。
大きな円形のドームの中心に、黒い巨体のプラネタリウムがどっしりと構えている。

「久しぶりよね、こんなところ」

「ガキの遠足かよ」

ブツブツと亮二はまた不機嫌そうだ。

「怒ってるでしょ」

「怒ってねぇよ」

「うそ」

「うるせぇ」

博子は笑って席についた。

背もたれがゆっくり倒れる。

亮二も背もたれを倒した。

淡い光に、白いドーム型の天井が浮かび上がる。

上映時間までもう少しだ。

<星座、か…>

博子はあることを思い出すと、笑いが止まらなくなってしまった。

「気持ち悪りぃな、おまえ。何笑ってんだよ」

亮二がしかめっ面で体を起こした。

「ね、ね、新明くんって」

博子も体を起こす。
しかし笑いが止まらず、次の言葉がなかなか出てこない。

「…んだよ、早く言えよ」

「乙女座なんでしょ」

「は?だからどうだっつんだよ」

彼はムッとして、もう一度背もたれを倒した。


中学の時、女子の間で占いが流行った。
博子も少なからず、その輪に入る。

星占い、動物占い、いろんなものがあったが肝心なのは相手の生年月日。

顔を真っ赤にして、亮二に誕生日を聞いた記憶がある。

『それを聞いてどうすんだよ』

案の定、彼は教えるのを渋った。

『いいじゃない。だって普段私に偉そうなこと言ってるけど、本当はそんなに私と誕生日離れてないんじゃない?私、5月生まれよ。まさか、新明くん3月生まれ?だったら、そんなに変わらないのに学年が一つ違うだけで、こんなに偉そうにされたら、たまんないもの』

意味のよくわからない理屈をこねた記憶がある。

素直に聞けなかったから。

『面倒なやつだぜ、全く』

そう言って彼は誕生日を教えてくれた。


< 155 / 432 >

この作品をシェア

pagetop