はぐれ雲。
「これほど乙女座が似合わない人も、珍しいわよね」

「…るせぇな。そう言うおまえは何座だよ」

「牡牛座よ」

「ぴったりじゃねぇか、牛」

「どういう意味よ、失礼ね」

その時、上映開始のブザーが鳴り響いた。

辺りの照明が徐々に落ちていく。

ゆったりとしたアナウンスと共に、一つ、また一つと星が姿を現す。

いつしか、博子と亮二の頭上には満点の星空が広がっていた。

ずっと見ていると、吸い込まれてしまいそうになる。

宇宙にはこんなにたくさんの星があって、今住んでいる地球なんてその一つにしかすぎない。

その中に自分が存在する。

友がいて、家族がいて、愛する人がいる。

今自分のそばには、気の遠くなるような確率で出会った人たちばかりなのだ。

不思議な感覚だった。

出会って、惹かれ合って、そして別れて、また出会って…

達也のことも、亮二のことも幾万の星の下では些細なことなのかもしれない。

<だったらもう流されるままに…>

そう思う自分の心の弱さに、博子はうんざりした。


<ねぇ、新明くん。
この流れ星が本物だったら、
あなたは何を願う?
私は…この心、全てを達也さんで満たしてくださいって、そう願うかしら。それとも…
新明くん、あなたで満たしてくださいって願うかしら。
決められないのよ、ずるいでしょ。
いっそのこと、私という女をこの世から消してくださいって、そうお願いしようかな。
その方が、どんなにか楽だもの>


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