はぐれ雲。
暑い夜だった。
「なぁ、直人。俺思うんだけどさぁ」
金髪頭をかきながら、浩介は運転席の直人に話しかけた。
「亮二さんて、かなり演技派だよなー。女の前だとあんなに笑ってさ。俺たちの前ではいっつも怖い顔してるのによ。やっぱ仕事ができる男は、メリハリがついてんだなー。さすがだぜ」
そう言って口笛を吹く。
彼らは、亮二が博子を駅まで送りに来た姿を遠目から見ていた。
これから彼を本部事務所まで送り届けねばならない。
何やら女は空を指差して笑っている。
「地味な女だな」と浩介。
しかし直人は黙って亮二を見ていた。
「まだ一回もホテルに行ってねぇだろ?亮二さん、あの女にてこずってんのかなぁ」
「さぁな」
「さぁなって、おまえ…」
助手席から浩介が運転席へ身を乗り出した途端、直人は車を降りた。
「お疲れ様でした、亮二さん」
浩介も慌てて降りる。
直人が後部座席のドアを開けると、亮二は何も言わずに乗り込んだ。
その時にはすでに、いつもの厳しい顔の彼に戻っていた。
「どうっすか、亮二さん。あの女、しぶといんすか?」
浩介は冗談交じりに聞くと、亮二は煙草の煙を助手席に吹きかける。
「浩介」
「はいっ」
「黙ってろ」
「…はい」
それっきり誰も、何も話さなかった。
静かな車内にはエンジン音だけが響く。
「なぁ、直人。俺思うんだけどさぁ」
金髪頭をかきながら、浩介は運転席の直人に話しかけた。
「亮二さんて、かなり演技派だよなー。女の前だとあんなに笑ってさ。俺たちの前ではいっつも怖い顔してるのによ。やっぱ仕事ができる男は、メリハリがついてんだなー。さすがだぜ」
そう言って口笛を吹く。
彼らは、亮二が博子を駅まで送りに来た姿を遠目から見ていた。
これから彼を本部事務所まで送り届けねばならない。
何やら女は空を指差して笑っている。
「地味な女だな」と浩介。
しかし直人は黙って亮二を見ていた。
「まだ一回もホテルに行ってねぇだろ?亮二さん、あの女にてこずってんのかなぁ」
「さぁな」
「さぁなって、おまえ…」
助手席から浩介が運転席へ身を乗り出した途端、直人は車を降りた。
「お疲れ様でした、亮二さん」
浩介も慌てて降りる。
直人が後部座席のドアを開けると、亮二は何も言わずに乗り込んだ。
その時にはすでに、いつもの厳しい顔の彼に戻っていた。
「どうっすか、亮二さん。あの女、しぶといんすか?」
浩介は冗談交じりに聞くと、亮二は煙草の煙を助手席に吹きかける。
「浩介」
「はいっ」
「黙ってろ」
「…はい」
それっきり誰も、何も話さなかった。
静かな車内にはエンジン音だけが響く。