はぐれ雲。
亮二を事務所まで送り届けると、浩介が再び直人に言った。

「絶対おかしいって。亮二さん。女の方はまんざらでもないって感じだしさ。ホテル行こうと思えば行けるっしょ」

「しつこい」

「おまえだって、ちょっとは思ってるだろ」

確かに、直人も今まで見てきた亮二とは違うとは思う。

遊びやビジネス上で付き合う女には、こんなに時間をかけない。会ったその日にホテルに行くことも珍しくなかった。

でもあの女に限っては違う。

あの加瀬という女とは小・中学校が一緒だったという。

もともと顔見知りだから、なかなか手が出せないのか。

それとも警察官の妻だからか。

しかし、それ以上の理由があるように思える。

浩介も何となくそれに気付き始めている。

「俺さぁ、リサにしつこく聞かれて参ってんだよ」

浩介は携帯をいじりながら愚痴った。

「リサが?」

「亮二さん、最近リサと会ってないみたいでさ。あいつ、亮二さんは今何やってんだとか、他に女ができたんじゃないかとか、うるせぇんだよ」

「確かにうるさいな、それは」

「笑い事じゃねぇよ。着信履歴もあいつばっか」

そう言って、ディスプレイを直人に見せる。

「いいじゃないか。幼なじみみたいなもんだろ」

「って、おまえだってそうだろうが」

「あの独占欲の強さだけは、どうにもならないな」

「まったくよ」


「ところでおまえ、女と会うんじゃなかったのか」

直人は自宅マンションの駐車場に車を停めた。

「あーハルカちゃんね、うん、ちょっと」

浩介は直人に向かってウインクをする。

「またかよー」

直人は呆れ顔だ。

「おまえさぁ、かたっぱしから女に手出すのやめろよ。毎回別れ話でもつれて、家に居座られてさ。いっつも俺んとこに居候だろ」

「いいじゃん、直人ちゃん」

直人はさっさとマンションに入っていく。

「俺だって亮二さんみたいに、女をうまく使いこなしてみたいんだって。今はその練習だと思えよ」

「おまえと亮二さんじゃ、格が違うんだよ、格が」

エレベーターのボタンを押しながら、直人は笑った。




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