はぐれ雲。
浩介が冷蔵庫の中からビールを取り出して、テーブルに運ぶ。

よく泊めてもらうので、直人の部屋の事はよくわかっている。

「あ~うめぇ~」
浩介が顔をしわくちゃにする。

「なぁ、さっきの話だけど」

おもむろに直人が切り出した。

「え?ハルカちゃんのこと?」

「違う!亮二さんのことだ」

「あ、あぁ」

「実は、俺もいつもとは違う気がするんだよな」

「だろ?!な、なっ?!やっぱ直人もそう思ってたのかよ」

「あの女とは顔見知りだったらしいし」

「絶対ガキの時に付き合ってたんだって。で、たまたま昔の彼氏を見かけて、女は再燃!って感じだろ。そうでなきゃ、暴力団の本部まで一人で来るかよ」

浩介は興奮して早口になったが、ふいに声を低くする。

「亮二さんて、もしかしてマジな女にはなかなか手を出さないタイプとか?」

「さぁな」

「さぁなって、おまえさっきからそればっかじゃん」

「それよりさ、亮二さん。これくらいのお守りみたいなやつ持ってなかったか?」


直人は指で小さな丸を作って見せた。

「持ってる!あれで一回パクられたじゃん。まぁ、元はと言えば俺が悪いんだけど」

「そうだ、おまえが悪い」と直人は頷く。

そう、あれはまだ暴走族のメンバーだった頃。
浩介が敵対するグループと些細なことで諍いを起こし、それが飛び火して、グループ同士の大きな喧嘩にまでなった。

何台ものパトカーと、何十人もの警察官が現場に駆けつける。

亮二は浩介を止めようとしたが、興奮した彼に突き飛ばされてしまった。
その時に彼のポケットから何かが落ちる。

騒ぎを収めようとした警察官の一人が、運悪くそれを踏んだ。

その瞬間、亮二は人が変わったようにその警察官の胸ぐらをつかんだ。

「てめぇ、何しやがんだ!」

浩介はその亮二の剣幕に驚いて、自分が喧嘩をしていたことすら忘れてしまったくらいだ。

「公務執行妨害だ、逮捕しろ」という声が飛び交う。

直人が止めに入るも遅く、亮二はその警察官を殴ってしまった。

現行犯逮捕。


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