はぐれ雲。
乱れた髪をそのままに、ふてくされた顔でリサはバーテンダーに言った。
「さっきのと同じやつ、もう一杯ちょうだい」
「もういい加減にしろよ」
浩介は明らかにイライラしている。
「何なのよ、あんたたち」
彼女は煙草を取り出すと火をつけた。
浩介が煙たそうに顔をしかめる。
「なぜ店に出ない?おまえはあそこの責任者だろ」
直人が厳しい顔で詰め寄る。
「……」
「売上が落ちてる。組に金を入れないと、亮二さんが困るんだ。おまえだってこのままじゃAGEHAのママじゃいられなくなるんだぞ」
「困る?あの亮二が?ふふっ、いい気味」
どんな顔をして彼は困るのだろう。
いつも無表情で、どんな時も感情を表に出さない彼が、困った時にはどんな目をするのだろう。
自分の知らない新明亮二。
でもあの女は知っているに違いない。
彼の辛そうな顔も、嬉しそうな顔も…
笑いが一瞬で消える。
「亮二、連れてきて」
低い震える声だった。
「リサ」
「亮二をここに連れてきてって言ってるでしょ!聞こえないの!」
カウンターをバンッと両手で打つと、リサは立ち上がって直人の肩を押す。
「連れてきてよ!」
「あのなぁ、無理言うなよ」
浩介が渋い顔で頭をかく。
「おまえ、このままじゃ…」