はぐれ雲。
「AGEHAはあたしに任すっていう契約書があるの!あたしを辞めさせたかったら、どうぞ。弁護士たてるから。勝つ自信ある?」

「本気で言ってるのか」
と直人が眉をひそめる。

「当たり前じゃない。負ける勝負をはなからするわけないでしょ」

「おまえも俺たちも、どれだけ亮二さんの世話になってるのか、わかってるか?」

「あたしだって亮二に尽くしたわ。尽くして尽くして、挙句の果てにこのザマよ!
もう、早く亮二呼んで。あんたたちに話すことなんて何もないんだから」

「リサ!」

「呼べって言ってんのよ!」

狭いバーに、その金切り声はあまりにも大きく響き渡った。

それ以降彼らが何を言っても、彼女は無言で煙草を吸い続けた。


連絡を受けた亮二が、3人の待つバーにやってきた。

久しぶりの彼の気配。

革靴のコツコツという音が近付いてきて、リサの背後で止まる。

直人が何やら小声で亮二に話をしている間、彼女は無意識のうちに前髪を整えていた。


経緯を聞くと、
「わかった、すまなかったな」と直人の肩に軽く手を置いた。

彼の声が聞こえて、自然と胸が高鳴る。

やっぱり彼を愛している。

「リサ」

彼が隣に座る。肩が触れ合いそうなほどの距離に彼がいる。

「店に戻れ」

「嫌よ、あたしの店なんだからあたしが何をしようと勝手じゃない。ま、あたしと寄りを戻すっていうなら、話は別だけど」

誘うような視線を亮二に投げかける。

「おい、おまえ!」

後ろで控えていた浩介がわめいたが、亮二が「いい」と静かに制する。

他の客たちはただならぬ気配に、次々と店を出て行く。

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