はぐれ雲。
亮二はリサをホテルのベッドに押し倒し、手荒く服を脱がせると彼女の上に覆い被さった。

リサは、そんな亮二を抱きしめる。

なんて久しぶりの亮二の肌なんだろう。

彼女はそのことに酔いしれた。

<ひきしまったこの腕や胸も、微かに漂う煙草の匂いも、力強い動きも、すべてがあたしのものだったはず。なのに…!>

リサは胸元の亮二の頭を抱き寄せた。

彼が中に入ってくると、リサはゆっくりと体をそらせた。

思わず息が漏れる。

彼の顔が目の前にあった。

「亮二…」

内から込み上げてくる快感に、彼女は身をよじらせ汗ばんだ亮二の体を精一杯抱きしめた。


亮二はシャワーを浴びると、床に落ちていたシャツを拾いあげた。

「…明日から店に出るわ」

ベッドの中からリサが言ったが、返事はない。

「ねぇ、何か言ってよ」

黙々と険しい顔で、彼は服を着る。

「亮二!」

たまらずリサはベッドから体を起こした。

そんな彼女に、亮二は一度目をやると溜息をついた。

「何か言ってよ…」

懇願するような目。

<一言でいい、罵られてもいい。あたしに何か言って>

しかし、結局彼は何も言わずにホテルの部屋を出た。


リサは呆然と白い壁を眺めた。

<亮二が、仕方なくあたしを抱いた。
目的のためだけに、このあたしを抱いた>

惨めだった。

情けなさと、恥ずかしさでいっぱいになった。
もう完全に彼の心は離れている。
彼の中にもう自分の居場所はない。

認めたくなかったけれど、今やっと思い知らされた。

リサの体に刻まれたアゲハ蝶が、哀しく震えた。

同時に加瀬博子という女への憎しみが、一層深くなっていく。
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