はぐれ雲。
遠くで子どもの歓声が聞こえた。
目をやると、石を川面に向かって投げている。
石切りだ。
石は、4回、5回と水面を滑ると川底に沈んでいった。
懐かしさを覚えて、博子は立ち上がった。
それに気付いた亮二が目で彼女を追う。
平たい石を拾う、博子も子どもと同じように、川面に水平にその石を投げた。
石は水面を3回切る。
「ね!見た?3回よ、3回!」
嬉しくて、満面の笑みで亮二を振り返った。
「ガキ」
素っ気ない言葉が返ってくる。
「できないんでしょ、石切り」
「あ?見せてやるよ、ビビんなよ」
彼は立ち上がると、石を探し始めた。
紅の川に向かって、彼は石を投げる。
1回、2回、3回…
3回目で亮二の放った石は姿を消した。
「…んだよ、何笑ってんだよ」
「だって、私と変わらないじゃない」
おかしくて、博子はお腹を抱えて笑った。
「腕がつっかえたんだよ。おまえ、持っとけ」
ムッとした顔で亮二は上着を脱ぐと、博子に投げつけた。
「はいはい」
シャツの袖をまくりあげると、もう一度彼は石を拾い上げる。
「見てろよ、10回はいくからな」
しかし、7回で石は沈んでいった。
「くそっ」
「惜しいね」
「今度はいくからな」
まるで子どものように、夢中で彼は石を投げ続けた。