はぐれ雲。
<この計画が成功すれば、彼はきっとあたしのところに戻ってくる。あたしなしでは生きていられなくなる>


AGEHAは大盛況だった。

毎晩札束が右から左へ流れていく。

「ママ、しばらく見ないうちに女をあげたんじゃないか」

中年男が、油っぽい手でリサの手を撫でまわす。

「お上手ね、相変わらず」

どんな客に対しても、彼女は精一杯の笑顔を見せた。

<亮二のためなら、何だってする。そう…何だって>

以前のようにAGEHAは活気を取り戻していた。

ただ彼が全く店に顔を出さないことが、唯一の不満だった。

毎晩毎晩彼がくれた高価な着物に袖を通し、いつでも彼をもてなす準備は整っているのに、あれ以来一度も来てくれない。

その代わり、ブルーローズの雇われ店長のレンが店に頻繁にやって来た。

みすぼらしい格好でおどおどしながら入ってきては、リサに馴れ馴れしく接する。

大企業の社長や政治家がいる中、ホステスたちが苦笑いするほどレンは貧弱に見えた。

リサが他の客を相手にしていると、離れた席から舐めるような視線を送ってくる。

煩わしかった。

無視しようにも、高価な酒を入れてくれるレンを粗略に扱うことはできない。

あの男のどこにそんな金があるのか、リサは不思議で仕方なかった。



「ねぇ、レン。最近よく来てくれて嬉しいわ。でもブルーローズの仕事は大丈夫なの?」

彼はリサの手を握りながら言う。

「大丈夫ですよ。気にしないでください。リサさんに会えるなら毎日来ますよ」

完全にレンは舞い上がっていた。

和服姿のリサはもっと艶めかしい。

「そうなの。いい子をそばにつけるから、楽しんでね。じゃあ、ごゆっくり」

そう愛想笑いをして席を立とうとした彼女をレンは必死に呼び止めた。

「ちょっと、ここにいてくださいよ!」
彼はそう言うと、かばんから取り出した札束を無造作にテーブルに置いた。

グラスが倒れて、酒でテーブルも床も濡れる。

まわりからどよめきが起こった。

リサは周囲に笑顔で会釈すると、レンを店の外へ連れ出した。

「あのお金、どうしたのよ。失礼だけど、レンがこんな大金持ってると思えない」

「それは…」

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