はぐれ雲。
<ねぇ、新明くん。
あなたが最後に泣いたのはいつ?
ずっとそうやってきたの?
ねぇ…今日はあなたが流せない涙を、私が流してあげる。代わりに私が泣いてあげる。
あなたの悲しみを、ほんの少しだけど私がもらってあげる。
だから、ねぇ新明くん。
これからは、その凍ってしまった涙を少し温めてあげて。全てをその胸に閉じ込めてしまわないで。ねぇ、お願い。自分の心をもう少し、いたわってあげて>


二人は辺りが暗くなるまで一言も発しなかった。

亮二も涙を流す博子の姿をずっと見ていた。


「じゃあ、また連絡する」

去っていく亮二の後ろ姿に、博子は言った。

「新明くん、次はどこか違うところで会わない?」

振り返った彼の顔は明らかに怒っている。

「何言ってんだ。おまえだってわかってんだろ、俺たちは…!」

「わかってる!ちゃんと、わかってるよ」

「じゃあ、なんでそんなこと言うんだ」

彼は苛立っていた。

「ごめんなさい」

うつむいたまま、彼女は頬にかかる髪を撫でる。

何て言えばいいのだろう。
少しでも彼の悲しみをまぎらわせてあげたい。
この人を元気付ける言葉を、自分は持っていない。
どうすればいいのかわからない。

そんな気持ちに彼は気付いたのだろうか。。

「いいか、博子。俺は家を出た時に、家族も捨てた。おふくろが死のうが、そんなの関係ない。
何とも思ってねぇよ。変な気をまわすな」

そう言った。

「……」

<うそつき。せめて私の前では意地をはらなくてもいいのに>


「そんな顔すんなよ。昔っから変わんねぇな、そのぶっさいくな顔」

言い返せずにうつむく博子に亮二はため息をつくと、歩み寄った。

「次で最後だぜ。どこに行きたいんだよ」

そう言って、軽く頭を小突いた。
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