はぐれ雲。
大きなソファーにのけぞった林の前に、黒いスーツを着た長身の若い男が立っている。
「新しいクラブの準備はすすんでるのか」
「はい。今、下の者にターゲットとする客層を調査させています。近々、具体的な案をまとめて報告します」
「さすがだな、さすがだ、亮二」
林は体を起こし、短くなった煙草を灰皿に押し付ける。
その様子を見ながら、彼は淡々と続ける。
「あと、県会議員の倉田氏の件ですが…県が発注する新しいダムの建設をうちの大和建設に、というお話をいただきましたが」
「ああ」
思い出したように林は立ち上がると、ブラインドの隙間から外の様子をうかがった。
「それは慎重にしろよ。警察もバカじゃねぇからな。あいつらはハイエナだ、どっからともなく嗅ぎ付けてくる」
そして、そっとブラインドに指を滑らし、指の腹についた黒ずみに片眉をあげた。
「気をつけます」
亮二の返事と共に、林は突然近くにいた若い男の胸ぐらをつかんだ。
「埃くらい払え!役立たずが!掃除もまともにできねぇのかよ!」
そう怒鳴ると、窓に男の頭を押し当てた。
ガシャン!
とブラインドが音を立てて揺れると、埃が舞いあがる。
「すっ、すみませんでした!」
怯えながらその男は、着ていた上着の袖口でブラインドについた埃を拭き始めた。
カシャカシャと部屋に響き渡る音。
緊迫した空気がその場を流れる。
誰もが無言で、光の中を漂う埃が妙に輝くのを見ている。