はぐれ雲。
「おまえはどうしても刑事を続けたいのか?奥さんと別れてまでもやりたいのか?」
「え?」
「奥さん、離婚したらおまえは刑事に戻れるのかって。自分と縁が切れたら、また捜査に加えてもらえるのかって。そりゃあ何回も何回もさ…俺にさ、課長に取り合ってもらえないかってそこまで言って…」
「離婚?」
達也は眉をひそめて立ち上がった。
「え?あ、まだ聞いてなかったのか?何でも、離婚を…」
ガタンッと椅子から立ち上がると、彼は安住を押しのけて部屋を出た。
階段を慌てて駆け降りる。
まだそんなに遠くには行っていないはずだ。
「…博子」
『君は俺を愛してなんかいない。愛してるって、そう思ってただけじゃないのか』
博子に向けた自分の酷な言葉が、急に重く心にのしかかった。
あの時の、博子の瞳が忘れられない。
本部の玄関を出たところで、突然ポケットの携帯がけたたましく鳴った。
舌打ちをして、電話を取り出す。
「はい、加瀬…」
ふとやった視線の先に、神妙な面持ちの真梨子が立っていた。
「先輩、お話があるんですが…」
目の前の彼女の声が、電話を通して無機質に聞こえた。