はぐれ雲。
新明亮二は股を大きく開いて、体を背もたれに預けた。

「なんや、横柄なやつやな。ま、ヤクザちゅうもんはそんなやつらやけどな」

桜井が隣室の小窓から取調室をのぞいて、そう言った。

達也も厳しい顔つきで、亮二を見る。

間違いない、あの日の決勝戦で闘った男だ。

「新明さん、ご足労いただきましてありがとうございます」

安住が席につく前に、軽く頭を下げた。

「挨拶はいいから、さっさと聞くことだけ聞いてくれませんか。俺も忙しいんですよ」

面倒くさそうな亮二に笑いかけると、安住は彼の向かいに座った。

「では、ご要望通り余計な話はなしにして。湊川リサさんはご存知ですね」

「あぁ」

「どういう関係ですか」

「どうもこうも、仕事上の付き合いですよ」

「湊川リサさんは恋人関係にあったと」

「以前はね。今はもう個人的な付き合いはありません」

「彼女、売春斡旋容疑で逮捕されましてね」

「そうらしいですね」

「彼女は、自分がママを務める店のホステスとは別に、女性を集めて売春行為をさせていた。
あなた名義のお店ですよね、AGEHAというクラブは」

「確かに」

「売春はあなたが指示したことですか?」

「ご冗談を」

亮二は声をあげて笑った。

「名義は確かに俺です。でもあの店の一切はあいつに任せてます。あんたたちも知ってるんでしょ、そういう内容の契約書があるって」

「その書類は?」

「警察ってのは、わかってることもいちいち聞くんだな。組の顧問弁護士に聞いてみろよ」

「では彼女が売春斡旋していたことは」

「知るわけないだろ。言っただろ、あいつに全部任せてたって」

「でも、以前は新明さんがあのクラブを仕切っていたそうですね。どうして急に湊川さんに譲られたんですか?」

「うるさかったんだよ。あいつ自分で何もかもやってみたいって。まぁ、俺もまだ他の女とも遊んでみたかったし、あいつの束縛に嫌気さしてたし、あの店を任せる代わりに別れてくれって言ったんだよ」

「本当に?」

「なぁ、刑事さん。リサが言ったのかよ、俺が指示したって」

安住は何も言わず、笑顔を向けた。

「言わねぇよな。現に俺は無関係なんだからな」



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