はぐれ雲。
ここまで言うと、亮二は突然小声になって、身を乗り出した。

「それにあの女の旦那、ここの刑事なんだろ?」

その言葉に、目の色を変えた安住が身を乗り出して食いつく。

「あなたはそれを知ってた?」

達也の部屋にいる刑事たちも色めきだつ。

「知ってたぜ。調べたからな。
あいつが何してるか知りたかったんだよ、役に立つかと思ってな。じゃあ、旦那が刑事ときちゃあ、ビビりましたね。
正直、会わなくなった理由の一つはそれですよ。俺が圭条会に入ってるってばれたら、ヤバイでしょ。だから、そんな女に手ぇ出すわけないって」

「じゃあ、加瀬さんのご主人が刑事だとわかった時点で、彼女と会うのをやめた、ということですか?自分が圭条会の人間だと、彼女にばれるより前に」

「そうですよ」

「なるほど、ね。ところで、中学生の頃、ずいぶん仲が良かったと聞いていますが、お付き合いされてたんですか?加瀬さん、いや葉山さんと…」

「とんでもない。ただの後輩の一人ですよ。言ったでしょ、俺は一人の女に束縛されるのは苦手なんです。いろんな女と遊びたいタチなんですよ。今も昔も」

「では、加瀬さんとは何度も会ったけれど、ただそれだけだったと」

「そう。さっきからそう言ってるじゃねぇか。しつこいよ、あんた。俺の話、ちゃんと聞いてる?」

「加瀬さんとはその時どんな話を?」

「さあなぁ、あんまりよく覚えてねぇけど、昔の話したくらいかな。あのさぁ…」

亮二が足を組んだ。

「さっきから何なんだよ。そんなつまんねぇこと聞くために呼んだのかよ」

そう言うと、机の脚を蹴った。

安住は咳払いを一つすると、改まって口を開いた。

「新明さん。湊川リサが、あなたと加瀬博子さんが男女の関係であったと証言しています。
我々はあなたの立場と、加瀬さんのご主人が刑事であるということを考慮して…
たとえばの話ですよ。
彼女と深い関係になったあなたが、何らかの警察情報を入手した、もしくは、そういう動きがあったのではないか、と」
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