はぐれ雲。
「博子は嘘で乗り切った。そしてあなたもあんな嘘で今回のことを乗り切ろうとしている」
「どうして俺がそんなことをする必要があるんですか」
「あなたは、降りかかる火の粉を一身にかぶろうとしている。あなたの組織を守るため?
そうじゃない、他ならぬ博子のために」
「馬鹿馬鹿しい」
亮二は笑った。
「結婚してからの彼女は、従順そのものでした。頼りなくて、はかなげで、守ってやらなきゃ、そんな男心をくすぐるような雰囲気の持ち主でした。
ああ見えても、人の本質を見抜く力は持っているんですよ。特にあなたに関しては…ね。
そういう女です。
でも、素直すぎて、疑うことを知らない女でもあります。
世間の汚さを知らない。
でも、それは僕がそうさせたんです。
よく言う、籠の中の鳥ですよ。
真っ白な彼女のままでいてほしかった、
だからあんな窮屈な警察職員の官舎に閉じ込め、仕事に就かせることもしなかった。
彼女は望んだのに、僕は絶対に首を縦に振らなかった。
でも逆にそのことが、博子にあなたのことを想う時間を与えることになったんです」
亮二は黙ったまま、手の中の缶コーヒーを見つめている。
「でもここ数ヶ月、彼女は強くなった」
達也は隣に座る男の顔を食い入るように見つめた。
「あなたですよ。そうさせたのは新明さん、あなたです」
ただ一点を見つめたまま、その男の端正な顔立ちはピクリとも動かない。
「僕と結婚した際に、新明亮二という男への想いと一緒に、博子は本当の自分も封印してしまった。時を経てそれを解いてしまったのが、あなたなんです。
心があなたに向いている限り、本来の自分を取り戻した彼女は、どんなことがあっても前を向いて生きていける」
「どうして俺がそんなことをする必要があるんですか」
「あなたは、降りかかる火の粉を一身にかぶろうとしている。あなたの組織を守るため?
そうじゃない、他ならぬ博子のために」
「馬鹿馬鹿しい」
亮二は笑った。
「結婚してからの彼女は、従順そのものでした。頼りなくて、はかなげで、守ってやらなきゃ、そんな男心をくすぐるような雰囲気の持ち主でした。
ああ見えても、人の本質を見抜く力は持っているんですよ。特にあなたに関しては…ね。
そういう女です。
でも、素直すぎて、疑うことを知らない女でもあります。
世間の汚さを知らない。
でも、それは僕がそうさせたんです。
よく言う、籠の中の鳥ですよ。
真っ白な彼女のままでいてほしかった、
だからあんな窮屈な警察職員の官舎に閉じ込め、仕事に就かせることもしなかった。
彼女は望んだのに、僕は絶対に首を縦に振らなかった。
でも逆にそのことが、博子にあなたのことを想う時間を与えることになったんです」
亮二は黙ったまま、手の中の缶コーヒーを見つめている。
「でもここ数ヶ月、彼女は強くなった」
達也は隣に座る男の顔を食い入るように見つめた。
「あなたですよ。そうさせたのは新明さん、あなたです」
ただ一点を見つめたまま、その男の端正な顔立ちはピクリとも動かない。
「僕と結婚した際に、新明亮二という男への想いと一緒に、博子は本当の自分も封印してしまった。時を経てそれを解いてしまったのが、あなたなんです。
心があなたに向いている限り、本来の自分を取り戻した彼女は、どんなことがあっても前を向いて生きていける」