はぐれ雲。
「先ほどの聴取といい、僕の話といい、あなたはのらりくらりと、全てをかわしてきた。
けれど、これだけははっきりと答えていただきたい」

そして達也は目の前の新明亮二に一歩、また一歩と近付く。

「愛していますか?今でも彼女のことを」

「……」

「答えてください」

達也の足が止まると、二人の男の視線がぶつかり合う。

音をたてるでもなく、ただ相手の目を刺すように見入る。

お互いの隙を探すかのような、鋭い眼差し。

永遠に続きそうな張り詰めた空気。


遠くの車のクラクションをきっかけに、達也はふっと笑った。

それは全てを悟ったような、それでいて何かをあきらめたような、そんな哀しい笑みだった。

そして穏やかな口調で、こう言った。

「新明さん。博子の心の奥深くに、ずっといたのがあなただとわかった時から、考えていたことがあるんです。もし、あなたがそちらの世界の人でなければ、僕は彼女のために喜んで身を引い…」

「加瀬さん!!」

達也の言葉を遮るように亮二は怒鳴った。

先ほどよりももっと険しい顔で。

あまりの剣幕に、達也は続きの言葉を飲み込んだ。

「あいつはあんたを選んだんだ!男ならちゃんと責任持てよ、そうだろ!
もし…だと?今さら何言ってんだ。
それ以上つまんねぇ口、たたくなよ!!それに…」

落ち着きを取り戻そうとするかのように、亮二は唇を舐めた。

「それに俺は組を抜ける気なんてない」

とさっきとはうってかわって、静かに付け加えた。

「そう…ですか」

達也は頷き、またしても哀しく微笑んだ。


なぜなら、

亮二の怒鳴ったその顔を見た瞬間、

彼は今でも博子を愛している…

そう確信したから。

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