はぐれ雲。
レンの母親は、近所でも評判の美人だった。

雪のように白い肌、鼻筋の通った典型的な和風美人で、レンと住むアパートの近くでスナックを経営していた。

彼の父親は店の常連客で、すでに妻子持ち。

子どもができたと知ったその男は、お腹にいたレンと母を置いて姿をくらましてしまった…そんな話を近所の噂好きな中年主婦たちが話しているのを、物陰で聞いたことがある。

けれど、そんなことはどうでもよかった。

母は、レンの自慢だった。

容姿も同級生の母親たちに比べると、格段に若く美しい。

そんな母にレンはいつも甘えた。

母も彼を溺愛してくれたし、二人だけの生活でも寂しいと思ったことはない。

夜、母は近所のスナックに出勤する。
小さなアパートの一室で彼は一人で夜を過ごすことになるが、近くに母がいると思うと全然平気だった。

しかし小学6年生の冬の朝、母が見知らぬ若い男を連れて帰ってきた。

どう見ても母よりは一回りほど、年下に見える。

彼が一人で朝ご飯のパンをかじっていた時だ。

母は嬉しそうにその男を部屋に招きいれると、レンのことを紹介した。

あまりに突然のことでレンは自分がその時何を言ったのか、そして男の名前はなんだったのか、覚えていない。

ただ、ショックだった。

母のあんなとろけるような笑顔を見たことに。

母に急かされて学校に送り出されると、レンはあの二人が何をしてるのか気になって仕方なかった。小学6年にもなれば、だいだいのことは検討がつく。

しかし、認めたくなかった。
母は、自分のものなのだ。

一緒に風呂に入った時に盗み見する、白い膨らんだ胸元も、首筋も。

学校に行ったふりをして、アパートの部屋の前に戻ってきていた。

そっと薄っぺらいドアに耳を寄せる。
母の聞いたことのないような、甘ったるい声が、途切れ途切れに聞こえてくる。

頭が真っ白になった。
やめさせなければ、と思った。
でも体が動かない。
レンはその場に膝を抱えて座り、漏れ聞こえてくる生々しい声に股間がむずむずするのを感じた。

どれくらいそうしていただろう。

何も聞こえなくなった部屋のドアを開ける。

鍵はかかっていなかった。

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