はぐれ雲。
中をのぞくと、そこには男が冬なのに上半身裸であぐらをかき、煙草を吸っていた。
上がり口でレンは呆然と男を見る。
レンがいることに気付いているはずなのに、男はただ伏目がちに煙草を燻らせる。筋肉の盛り上がった腕は、褐色に光っているように見えた。
奥の布団が敷かれた部屋では、母がこちらに背中を向けて眠っていた。
いつもと一緒の光景だ。
仕事を追え、昼過ぎまでこうやって眠るのが母の生活パターンだ。
しかし、一つ違うところがあった。
彼女がパジャマを着ていないということ。
シミーズの肩紐がずれ、肩甲骨があらわになっている。
レンは怒りに満ちた目で、その男を見た。
<俺の母さんだぞ!>
その心の叫びが聞こえたのだろうか、若い男がレンを初めて見た。
体に似合わず、切れ長で透き通るような瞳。人の心を全て読み取ってしまいそうな、その冷たく、澄んだ目。
その目がレンに、こうささやいたような気がした。
<悔しいか?悔しいだろ。大好きなおふくろさんは、おれに夢中だ。所詮、おまえなんかにあいつを悦ばせることはできないんだよ。わかったか、ガキ>と。
レンは頭をガツンと強く殴られたような感覚に襲われ、後ずさりした。
玄関の敷居につまずき、しりもちをついた。
慌てて立ち上がると、その場を逃げ出すかのように、走った。
あの目が忘れられない。
何もかも見透かし、やけに澄んだ冷たい男の瞳が…。
「わあああ!」
レンは叫び続けた。
「母さん!母さんを返せよ!あああ!」
彼にとって新明亮二のあの目は、母を奪った男を彷彿とさせるものだった。
亮二の瞳が、母のはだけた背中を思い出させる。
怖かった、ただ怖かった。
「母さん!!」
上がり口でレンは呆然と男を見る。
レンがいることに気付いているはずなのに、男はただ伏目がちに煙草を燻らせる。筋肉の盛り上がった腕は、褐色に光っているように見えた。
奥の布団が敷かれた部屋では、母がこちらに背中を向けて眠っていた。
いつもと一緒の光景だ。
仕事を追え、昼過ぎまでこうやって眠るのが母の生活パターンだ。
しかし、一つ違うところがあった。
彼女がパジャマを着ていないということ。
シミーズの肩紐がずれ、肩甲骨があらわになっている。
レンは怒りに満ちた目で、その男を見た。
<俺の母さんだぞ!>
その心の叫びが聞こえたのだろうか、若い男がレンを初めて見た。
体に似合わず、切れ長で透き通るような瞳。人の心を全て読み取ってしまいそうな、その冷たく、澄んだ目。
その目がレンに、こうささやいたような気がした。
<悔しいか?悔しいだろ。大好きなおふくろさんは、おれに夢中だ。所詮、おまえなんかにあいつを悦ばせることはできないんだよ。わかったか、ガキ>と。
レンは頭をガツンと強く殴られたような感覚に襲われ、後ずさりした。
玄関の敷居につまずき、しりもちをついた。
慌てて立ち上がると、その場を逃げ出すかのように、走った。
あの目が忘れられない。
何もかも見透かし、やけに澄んだ冷たい男の瞳が…。
「わあああ!」
レンは叫び続けた。
「母さん!母さんを返せよ!あああ!」
彼にとって新明亮二のあの目は、母を奪った男を彷彿とさせるものだった。
亮二の瞳が、母のはだけた背中を思い出させる。
怖かった、ただ怖かった。
「母さん!!」