はぐれ雲。
「…それより、奥さんはどないや」
「ええ、まあ」
「なんや、そのあいまいな返事は」
桜井は笑った。
「…妻は必死に立ち直ろうとしています。僕に気遣って涙を見せたり、弱音を吐いたりしませんが、妻は新明のことを愛していたんだと思います。その気持ちが痛いほど伝わってきます。今彼女はあの壊れかけた心で、彼の死を必死に受け止めようとしています。
でも僕にはそれを見守ることしかできません。妻を散々悪く言う人はいます。
だけど、これだけは自分に誓ってるんです。誰が何と言おうと、妻の傍を離れないって…」
桜井はやっと缶コーヒーを飲み終えると、「どっこらしょ」と言って立ち上がった。
「地味やなぁ」
「え?」
「地味すぎるで、自分はそっと見守りますって。それやったら、まるっきし陰の男やないかい。お陽さんの当たるとこに出んかいな、自信持って。陽の当たるとこで、ババーンと!陰の役は、もう新明に代わってもろたらええんや」
「陽のあたるところ?」
「そうや、おまえが奥さん守るんやろ。堂々としかなあかんのとちゃうか?
そうせんと、いざとなった時に奥さんかて、おまえに頼られへんやろ。
小学校で習わんかったか?
日陰のひまわりは茎も細くて、花も小さいって。今にも倒れそうですって。
わしはそう習うたで。それと一緒や」
「…」
「ほな、コーヒーごちそうさん」
桜井は昔に流行った演歌を口ずさみながら、達也のもとをあとにした。
達也の胸の中に温かいものがじんわりと広がっていくようだった。
桜井の何気ない言葉が、こんなにも力を与えてくれるなんて。
「ええ、まあ」
「なんや、そのあいまいな返事は」
桜井は笑った。
「…妻は必死に立ち直ろうとしています。僕に気遣って涙を見せたり、弱音を吐いたりしませんが、妻は新明のことを愛していたんだと思います。その気持ちが痛いほど伝わってきます。今彼女はあの壊れかけた心で、彼の死を必死に受け止めようとしています。
でも僕にはそれを見守ることしかできません。妻を散々悪く言う人はいます。
だけど、これだけは自分に誓ってるんです。誰が何と言おうと、妻の傍を離れないって…」
桜井はやっと缶コーヒーを飲み終えると、「どっこらしょ」と言って立ち上がった。
「地味やなぁ」
「え?」
「地味すぎるで、自分はそっと見守りますって。それやったら、まるっきし陰の男やないかい。お陽さんの当たるとこに出んかいな、自信持って。陽の当たるとこで、ババーンと!陰の役は、もう新明に代わってもろたらええんや」
「陽のあたるところ?」
「そうや、おまえが奥さん守るんやろ。堂々としかなあかんのとちゃうか?
そうせんと、いざとなった時に奥さんかて、おまえに頼られへんやろ。
小学校で習わんかったか?
日陰のひまわりは茎も細くて、花も小さいって。今にも倒れそうですって。
わしはそう習うたで。それと一緒や」
「…」
「ほな、コーヒーごちそうさん」
桜井は昔に流行った演歌を口ずさみながら、達也のもとをあとにした。
達也の胸の中に温かいものがじんわりと広がっていくようだった。
桜井の何気ない言葉が、こんなにも力を与えてくれるなんて。