ハルアトスの姫君―君の始まり―
「え、本当に？」

「家が承諾した。ありがたく住まわせてもらうことにしようではないか。」

「家が承諾って…この家の素材も魔法の何かなの？」

「そうではない。その箒はお前たちのように普通の人間にも聞こえるような〝音〟を発することができる。そういうものは目に見えて分かりやすい魔力を持つ物体だ。
だがな、音なき音をモノはいつだって発している。それを汲み取ってやるのも魔女の仕事だ。」

「音なき…音…。」


シュリの顔が一瞬だけ切なげに歪む。
そしてすぐにいつも通りの表情に戻り、家の奥へと入っていった。


「…少々汚いがそれはまぁ仕方があるまい。
荷を下ろし、情報を集めに出るぞ。
だが…クロハはともかく、ジアはそれでは目立つな。」

「へっ…？」

「確かに。金髪で両目の色が違う。目立ちすぎ。」

「そんなのあたしのせいじゃ…！」

「変化の魔法、試すか？」

「た…試すって失敗するかもってこと？」

「私はその道の専門家ではない。だが…人を人に化け変えるくらいは問題ない。心配するな。」

「んなこともできるんだな、魔法って。」

「万能ではない、がな。ではジア、目を瞑れ。」

「う、うん…。」


シュリに促されるままに目を瞑る。
一瞬、何かが光ったと思うと身体がふわりと浮いたような感覚に包まれる。


再び足の裏に地面を感じた時、見える世界が少しだけ変わった。


「…あ、れ…？なんだか…ち、縮んだ？」

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