ハルアトスの姫君―君の始まり―
「うわ…お前…全然違…っ…!」

「え…?」


この家には鏡というものがない。
自分で自分を見る術がなくてオロオロしていると、シュリが落ち着けと言わんばかりに言葉を発した。


「まずは成功だな。ジアは標準女性よりもやや背が高く、ただの村娘と偽るには少し無理がある。
そのため少し身長を削り、そばかすなども増やしてみた。
…さすがに目の色は変えることはできなかったな。呪いの力にこの変化の魔法は負ける。」

「か…髪も金じゃない…。」


それに短くなっていた。肩に少しかかる程度の髪を手ですくう。


「黒…。」

「片目は眼帯だな。それならば特に問題ないだろう。やや目立つが、仕方あるまい。金の目を隠して歩け。」

「う、うんっ。」

「すげぇな…声だけジアだけど…見た目は誰って思っちまうよ。」

「あ、あたしもなんか…視界が違うから変な感じ。」

「服装はちゃんと変わったな。村娘っぽいぞ。」

「へ?」


シュリにそう言われて見てみると着慣れないロングスカートにブーツ。
いかにも女の子らしい服装に悪寒が走る。


「な、す、スカート!?」

「いつものタイトな格好では目立つ。ここでは目立たずに情報収集するのが目的だ。文句はないな、ジア?」


シュリの瞳が鋭く光る。こう睨まれては何も言えない。


「ありません。」

「制限付きの魔法だ。時間は3時間しかもたない。
時間内に帰って来るのを忘れずに。ではミア、行くぞ。」

「え…?」

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