ハルアトスの姫君―君の始まり―
「キースはお前に何も話していなかったのか?」
「……。」
何も、ではない。
きっとあまり言いたくなかったであろう自分の出生のことを話してくれた。
話さずにいなくなることもできたのに。
それでも、目の前のジョアンナの方が多くを知っているのだろう。
それはその目を見れば一目で分かることだ。
「知りたい、か?」
「いいえ。」
「強がりだな。」
「違うわ。」
…違う。強がりなんかじゃない。
もちろん、キースのことは知りたい。あたしは知らないことが多すぎる。
でも聞くなら…
「キースのことはキースの口から聞きたい。
あなたの口からは聞きたくない。」
「…なるほど。実に〝らしい〟回答だ。」
満足そうに口元を緩めて頷く。
こうして会話をしている分には何らヒトと変わりはないというのに。
…何故、なのだろう。
纏う空気が彼女が〝ヒト〟であることを良しとしない。
「では一言だけ。
キースの想い人は死んだ。ルナ、と言ったな。」
〝ルナ〟
その響きは、あの日の出会いを鮮明に呼び起こす。
「……。」
何も、ではない。
きっとあまり言いたくなかったであろう自分の出生のことを話してくれた。
話さずにいなくなることもできたのに。
それでも、目の前のジョアンナの方が多くを知っているのだろう。
それはその目を見れば一目で分かることだ。
「知りたい、か?」
「いいえ。」
「強がりだな。」
「違うわ。」
…違う。強がりなんかじゃない。
もちろん、キースのことは知りたい。あたしは知らないことが多すぎる。
でも聞くなら…
「キースのことはキースの口から聞きたい。
あなたの口からは聞きたくない。」
「…なるほど。実に〝らしい〟回答だ。」
満足そうに口元を緩めて頷く。
こうして会話をしている分には何らヒトと変わりはないというのに。
…何故、なのだろう。
纏う空気が彼女が〝ヒト〟であることを良しとしない。
「では一言だけ。
キースの想い人は死んだ。ルナ、と言ったな。」
〝ルナ〟
その響きは、あの日の出会いを鮮明に呼び起こす。