ハルアトスの姫君―君の始まり―
役目は果たす
【クロハside】


風が二人の身体を包んで城へと運んで行くのをただ、見ていた。
なんとかミアの身体をキャッチすることができたため、ミアに怪我はない。それだけが救いだ。


「怪我、ねぇよな?」

「にゃー。」


幸い、おれも多少吹き飛ばされたくらいの衝撃しか受けていないため、怪我は軽い打撲と掠り傷くらいなもので済んだ。
治療的な意味で問題なのはおれらじゃない。…あいつらだ。


「にゃにゃにゃー!にゃ!」

「…待て待て、落ち着け。
今すぐ行きたいんだろ、ミア。」


そう訊ねるとミアはおれの足に手をあてた。そして頷く。


「落ち着け、な?」


おれはミアの頭を撫でる。今焦っても良いことなんて何もない。


「城には行く。ただ、そのためには絶対に準備は必要なんだ。お前なら分かるだろ?治療できるのはおれしかいない。
だから行くには行くんだけど…どうすっかな…。」


おれは唯一と言えるほどノーマルな人間だ。呪いにもかかっていなければ、魔力だって持ち合わせていない。


それなのに、戦わなくてはならない相手は魔力を持つ生き物。一筋縄でいくはずもない。


「とりあえず戻ろう。普通に歩いて行ったんじゃ変に捕まって殺されかねねぇ。」


おれはともかく、ミアが殺されるのだけは御免だ。

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