ハルアトスの姫君―君の始まり―
「キース…っ…。」

「なぜ…なんですか?」





声が震えた。手だって震える。
ねぇ、キース。キース…キース!





「なぜ、あなたが泣くのです?」

「キースは…忘れたの?
全部…全部っ…!あ、あたしは全部、全部覚えてるのに…!」





何を勝手なことをと蔑まれるかもしれない。罵られてもおかしくない。冷たい表情が崩れることだってないのかもしれない。
それでも今、この涙は止まってくれない。





「思い出してよ…!勝手にさよならだけ言って…傍にいるって約束したのに…簡単に破ったくせに!
破ったこと、怒ってるしまだ許してないけど…許させてよ!キース!」





瞬きが限界の合図だった。
両目から涙が零れ落ちて、キースの両頬に流れ着いた。





「っ…あっ…!」

「キース…?」


目の前のキースの表情が歪んだ。

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