ハルアトスの姫君―君の始まり―
「なっ…!」


キースだから刃を向けたくなんかない。
でもそれ以上に、あたしは〝死ぬ〟という未来を選択しない。


あなたを殺さない。そして自分の命も諦めない。


負傷していない右肩から、キースの身体に体当たりをする。
これはジェリーズで会得した技だ。


「うっ…!」


予想よりも多分、強い力だったからなのだろう。キースの細身の身体が傾いだ。
…これはチャンスだ。そのまま畳みかける。


さらにそのまま推し進め、その身体を倒す。


「っ…!」





倒した身体に跨り、剣先をその喉元に向けた。





「お見事…ですね。」





キースの持っていた剣は、脚で蹴って遠くに飛ばした。
…このまま剣を下ろせば、あたしは助かる。

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