ハルアトスの姫君―君の始まり―

 はかりかねていた距離

【クロハside】


呪いが解けて一週間。未だにジアは目を覚まさない。
ミアといえば、あの日は力のほとんどを放出したために顔色が悪かったが、次の日にはしっかりと目を覚まし、目覚めた治癒能力を使って治療に勤しんでいた。
一通りみんなの治療を終えると、シュリに魔法のことを訊ねるようになった。しかしどうも一般的な魔法使いとは魔力の使い方が異なるようで(とはいってもおれには全く理解不能だ)シュリやシャリアスの説明通りにやっても上手くいくことはなかった。それにそもそも治癒の魔法を使えないシュリやシャリアスも正直お手上げといった様子だった。ベーシックな知識全般は伝えていたようだが、結局、伝説めいた力は独学で自分のものにしていくしかないらしい。


あまりにせわしなく動くものだから、おれもさすがに心配になって一度だけ注意したことがある。


「…ミア、あんまり無理しすぎるなよ。元々体力だってある方じゃ…。」

「…お姉様がいつ目を覚ますか分からない…だから、こちらから起こす方法を考えているの。」

「気持ちは分かるけど。」

「…動いていないと紛れてくれないの。
考えなくちゃいけない、色んな事が。」


そう言われてはおれは何も言えなかった。
その日以降、おれはミアと大した話もしていない。
顔を合わせるのは食事の時くらいなもので、ミアには治癒の魔法の勉強や古書を読むための語学勉強(伝説の力関係の書物はやっぱり古語らしく、それを読むために王宮の人間に習っている)、そしてハルアトス王家の姫としての仕事など、こなすべきことがあった。


そんな中、おれは一人、暇を持て余していた。

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