ハルアトスの姫君―君の始まり―
殺す刃、生かす刃
* * * 


「出発するわ。」

「忘れ物ねーよな。」

「にゃあ。」

「…俺も持つよ、それ。」

「いいよ。てめーになんか渡せるか。」

「信用ないね、俺。」

「当たりめぇだ!あれだけの傷、寝てただけで完治するなんて…。お前、一体何者だ?」

「そんなの俺が知りたいよ。」


そう言って微笑を零すキース。
その笑みに言葉がつまってクロハは結局何も言えなかった。


「…盗ったりなんかしないよ。
俺は剣一つしか持ち物がない。だから手伝う。それって不自然なことかい?」

「不自然なのはお前の傷の完治の仕方だ!」

「だから…それはまぁ…目を瞑ってよ。」

「できるか!」

「もークロハ、いい加減にしてよ。治ったものは治ったんだから。今更それをとやかく言っても仕方ないじゃない。」

「医者のはしくれだったら、その構造に興味が湧くのは当然なんだよ。」

「それはそうかもしれないけど…今は先を急いでるんだから。」


そう言ってジアが前を向いた瞬間だった。


「…っ…!!」

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