ハルアトスの姫君―君の始まり―
【シュリside】
「…真っ直ぐな瞳は色を増し、そして強さをも増す、とはよく言ったものだ。」
一人きりの部屋でそう呟いた。
ちょっと甘すぎるくらいのフレンチトーストは、疲れ切った脳に丁度良い。
作った主は料理に関してはあまり器用ではないと聞いていたが、味は悪くない。そう思うのは、ほだされている部分があるからなのか。
―――もっと責めるかと思っていた。
それが今の自分の正直な気持ちだった。
『教えてくれるって言ったのに、なんで教えてくれないの?』などと言葉攻めにされるだろうと思っていたのに、彼女の対応は違っていた。
毎日甲斐甲斐しく食事を運び、話し掛ける。つれない私の発言に砕かれることなく、毎日、同じ時間に欠かさず。
不意にさっき口走った言葉が蘇る。
『お前たちで言う一週間なんて私にとっては1秒みたいなものだ。問題ない。』
それは嘘ではない。それほどまでに、魔力を持つ者にとっての時間は無限かつ不変だ。
どれだけ時間を経ても世界も人間もほとんど変わらない。もちろん魔女も。それが500年生きてみて分かったことだった。
多少の変化はもちろんある。文明だって発達した。でも根本的なところでは全く変わらない。
ヒトは争いを繰り返す。どれだけ苦しい思いをしたか、忘れてしまったかのように。
傷を忘れたヒトはまたヒトを傷付け、傷付けられて痛みを思い出す。そうすることで痛みを残しておく。痛みが消えた頃にまた争いは起こる。ヒトは何故痛みを忘れることを拒むのか、甚だ理解に苦しんでいるところだ。
「痛みという感覚も…もうすでにないのかもしれないな。」
ヒトの中から『痛み』という感覚が薄れているのだとしたら、『自分』から痛みの感覚が薄れていかないのは何故なのだろうか。
「…シャリアス・ウドリック…。」
遠い待ち人の名を久しぶりに呟いた。
「…真っ直ぐな瞳は色を増し、そして強さをも増す、とはよく言ったものだ。」
一人きりの部屋でそう呟いた。
ちょっと甘すぎるくらいのフレンチトーストは、疲れ切った脳に丁度良い。
作った主は料理に関してはあまり器用ではないと聞いていたが、味は悪くない。そう思うのは、ほだされている部分があるからなのか。
―――もっと責めるかと思っていた。
それが今の自分の正直な気持ちだった。
『教えてくれるって言ったのに、なんで教えてくれないの?』などと言葉攻めにされるだろうと思っていたのに、彼女の対応は違っていた。
毎日甲斐甲斐しく食事を運び、話し掛ける。つれない私の発言に砕かれることなく、毎日、同じ時間に欠かさず。
不意にさっき口走った言葉が蘇る。
『お前たちで言う一週間なんて私にとっては1秒みたいなものだ。問題ない。』
それは嘘ではない。それほどまでに、魔力を持つ者にとっての時間は無限かつ不変だ。
どれだけ時間を経ても世界も人間もほとんど変わらない。もちろん魔女も。それが500年生きてみて分かったことだった。
多少の変化はもちろんある。文明だって発達した。でも根本的なところでは全く変わらない。
ヒトは争いを繰り返す。どれだけ苦しい思いをしたか、忘れてしまったかのように。
傷を忘れたヒトはまたヒトを傷付け、傷付けられて痛みを思い出す。そうすることで痛みを残しておく。痛みが消えた頃にまた争いは起こる。ヒトは何故痛みを忘れることを拒むのか、甚だ理解に苦しんでいるところだ。
「痛みという感覚も…もうすでにないのかもしれないな。」
ヒトの中から『痛み』という感覚が薄れているのだとしたら、『自分』から痛みの感覚が薄れていかないのは何故なのだろうか。
「…シャリアス・ウドリック…。」
遠い待ち人の名を久しぶりに呟いた。