ハルアトスの姫君―君の始まり―
「無くなってる…。」


小さく呟く声が耳に届いた。
声の主は紛れもなくフレンチトーストを作った人間だ。


「…良かったぁ。やっと食べてくれた。」


それはただ純粋に安堵した声だった。
その声があまりに優しかったからなのか、1週間も変わらない態度だった彼女を信頼したのか、今となってはよく分からない。
だが、声を発したのは自分の方だった。


「旨かった。」

「シュリ”!良かった…美味しくできてて。」

「不器用だと聞いていたんだが。」

「フレンチトーストくらいは作れるよ!」

「そうか…。」


会話はそこで途切れた。私の方が続かなくなったのだ。
今度はジアの方が口を開いた。


「シュリ…。」


ドアに背を預けて立ったからなのか、ジアの声はとてもよく聞こえた。


「なんだ?」

「…あたしが…シュリを混乱させちゃった?」


混乱…なのだろうか?
ただ思い出しただけとも言える。
自分がこの村に在り続ける理由…そしてかつては隣にいた『彼』を。

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