【完】風に恋をする。
「…風花、なにか…あったの?」
「…ごめん、ね」
「…風花…」
「ごめんね」
風花の「ごめん」は、言えなくての「ごめん」じゃない気がした。
俺たちに、「ごめん」って言ってるような気がしたんだ──。
「明日の練習はゆっくり寝てろよ」
「…うん、ごめん」
「バァカ、なんで謝るんだよ。絶対、もう一度戻ってこいよ」
「…っ」
泣きそうな顔で、そっぽを向いてしまう。
佳織は、今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。
「…じゃあ、また明日くるな」
「ぁ…疲れてるんだし、無理にこなくても」
「明日な」
そう言って、俺は佳織の手を引きながら病室を出た。